のーずいだんぷ

主に自分用メモですが、もしかしたら誰かの役に立つかもしれません

<勉強会>xR Tech Tokyo #18に行ってきた備忘録

はじめに

はじめて xR Tech Tokyoに参加してきたので個人的に得られた知見をまとめなおしてみたもの。 LTについては内容が凝縮されすぎていたので今回はまとめる対象外とした。スライドをそのまま確認したほうが良いだろう。

なので30min sessionの内容をメインに記載する。 今回はできるだけポイントをかいつまんで自分の理解で簡潔にまとめようと思う。 誤りがあればぜひ指摘いただきたい。

※まとめなので引用を明記していませんが、引用だらけです。

VR脱出アドベンチャーゲーム『Last Labyrinth(ラストラビリンス)』での没入感向上テクニック(@furaさん)

没入感向上には2つのアプローチがあると感じた。

  • 単純に没入感を向上させるもの
  • 没入感を阻害するものを排除するもの

Last Labyrinthでは、主に後者に対する対策をメインに没入感向上をしているようだ。没入感を阻害する要因としては以下のようなものになる。 いずれもVRゲーム全般に該当する問題だろうと思う。

  • 身体感覚のズレ問題:例として腕の長さが感覚と異なったり、ゲーム中の姿勢と現実の姿勢の不一致がある。これがあると慣れるまでかなり時間を要する。
  • コントローラの複雑度問題:移動操作を要するゲームは操作が複雑になりがちで、慣れる(没入感を得られる)までに時間を要してしまう。
  • VR酔い問題:VRに苦手要因を抱かせる致命的な要因となる。酔いを起こす操作として移動操作があるが、
  • 身体感覚弱い問題:触覚(触れられた感覚や質感)、痛覚、嗅覚等の再現(共感力)が弱い。
  • 現実には存在しない表示物問題:HPバーやスコアのようなデジタルな世界のみに存在するオブジェクトを配置するとプレゼンスが剥がれる原因になる。
  • キャラクター違和感問題:特に人間型のキャラクターで顕在化しやすい問題で、動作に違和感(人っぽく見えない)とプレゼンスが剥がれやすい。

Last Labyrinthではそれぞれ以下のように解決されてるようだった。

  • 身体感覚のズレ問題 → ゲームデザインを常時車椅子へ座らせるようにする
  • コントローラの複雑度問題 → レーザーポインティングとアクションをするかどうか(yes/no)のジェスチャーの2点まで簡単化
  • VR酔い問題 → 移動させないゲームデザイン
  • 身体感覚弱い問題 → ホラー表現にジャンプスケアを使用しない工夫(プレイヤーに想像させるホラー表現)
  • 現実には存在しない表示物問題 → NoUIを貫く
  • キャラクター違和感問題 → 高度なアニメーション技術により対処

アナログとデジタルを溶け合わせて作る「体験としてのAR」作り(@katakoto_std)

カタコトさんのバズった3つのアプリを例に、どういう風にARアプリを設計されてきたのか、というお話。

  • SPELL MASTER

  • SkyLetter

  • いないいない絵本

体験を直感的に理解出来るようにするにはどうするべきか

→スキューモーフィズムデザインの考え方を活用する。

スキューモーフィズムデザインとは??体験そのものやデザインにおいて、メタファー(暗喩)やそれに準じて近くできるものを使い

「見ただけで体験が伝わる」

ように翻訳する。

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SPELL MASTERの場合…

技術デモ/アイデアを言語化すると…

「書いた文字を3DモデルをARで呼び出す」

技術者は分かるけど、一般的な人には分かりにくい…3Dモデル?AR??呼び出すって???

↓ メタファーを使用した体験へ翻訳

「英単語学習を魔法学習に変える魔法陣」

→ 魔法学習や魔法陣がSF/ファンタジー映画のおかげでどんなものかイメージしやすくなっている。

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さらに上記のメタファーとして使用するものには、できるだけ「アナログなもの」がよい。

現実感があるもののほうがより直感的に体験に共感できる。

例えば上記の作品の「いないいない絵本」では「絵本」自体(アナログなもの)が、体験の入り口(ラビット・ホール)として使用されている。

でも体験の翻訳自体が難しいのでは??…

カタコトさんは素晴らしく、既にハウツーまで落とし込まれていたようで…

日々自分が製作している技術ネタ等を、技術の特徴ではなくそれが実現している「体験」でコピーライティングのつもりで言語化する。

上記を続けると無理なく体験設計が出来るようになるとのこと。

ドラゴンボールのコポコポの中に入るとマトリックスの世界に行ける未来をプールVRで創る

このセッション、色々と衝撃的だったのだが、領域がプールというかなり狭いところで勝負をされている部分があり、直接的な活用は難しそうだった。ので、汎用的に知見をざっと箇条書きでまとめてみた。

  • xR × ◯◯の可能性 そもそもプール×VRって可能性として、一般的な人からすると候補にに上がる組み合わせではない、少なくとも私には。むしろ漏電とか物理的な相性を考慮すると悪いのでは?と考えてしまう。西川さんがVRxプールを始めた理由はご自身がプールを長くやって来られていたのが一番の理由だったのだと思う。(もしかしたら説明があったかもしれない…)そう考えると、案外最初は自分に出来る得意な領域と掛け合わせてみるとか、一見ありえなそう組み合わせでもブレストとして真面目に考えてみるともしかしたらおもしろい結果が得られるかもしれない。

  • さっさと仮説検証 このセッションで驚いた点として、西川さんの圧倒的な行動力がある。すでにいくつかのプールVRの可能性の検証自体は実施されていて、現在はさらに今後のプールVRの付加価値向上施策として、既に自治体や企業と共同での検証活動を開始されるようだった。しかもこれをほとんど全てご自身一人でされているらしい、単純に行動が早く見習いたいと感じた。

  • 流行りの秘密は「映え」にあり 西川さんのプールVRの施策にタピオカ理論、があった。タピオカ理論とは、近年の流行の要因には「SNS(写真)映え」があるとして、映えさせることができればそれは流行するはず、という理論である。実際に以前流行ったナイトプールみたく、カラフルな光で照らす施策を試みたことで、実際にSNSで一定の反響を得られたそうだ。この結果を単純に捉えるのであれば、やはり視覚的なインパクトは流行りに大きく貢献するということ。よりメタ的に捉えるのであれば、ここ最近の「流行り」を分析した要因を転移させることができれば、「映え」以外でもはやらせることが可能かもしれない。

  • 検証するまでわからない 上記のタピオカ理論やxr X ◯◯の可能性の話もそうだが、やってみるまでどうなるかわからないという点がある。社会人をやっていると、可能性としてありえないものは事前に排除するような思考の癖がある。それが純粋な物理現象ではなく、流行りのようなあらゆる事象の影響を受けるようなものであれば、それはやってみるまでうまくいくかわからない。これからはできるだけ小さく、沢山試してみたいと思う。

これだけならビジネス書でまとめられてもおかしくないのだが、今回は実際に西川さんの体験を通して聞くことができ、より自分の中で納得した形で落とし込めたことに意味があったのだと思う。

まとめ

それぞれのセッションでは非常に濃い話を聞くことがで、いずれも今後の開発に活かせるものばかりであった。個人的には現在AR開発に最も興味が強いこともあり、カタコトさんのセッションが最も刺さった。

ARISEでもそうだったが、ながくAR開発を行われている方々には共通して「体験としてのARをつくる姿勢」と「AR体験導入のためのハードルを下げる工夫」の2点が共通の課題として存在しているようだった。

後のLTにもあったが、ARは界隈での盛り上がって終了してしまう傾向があるようだ。AR技術は技術として面白いから技術者としては面白さを混同してしまうし、もともと技術者は好奇心旺盛な人々が集まっているので体験へのハードルを感じないので流行ると勘違いしてしまうのかもしれない。

この2点の課題に徹底的に向き合うことにより、一般に受け入れられるAR体験を生み出すことことが出来るのだろう。今後の開発として強く意識していきたい。

体験させて頂いたデモ(他にも色々ありました)

自分で写真を取らなかったのでtwitterから他の人のツイートを引用させて頂いております。

  • unityちゃんとARかくれんぼ(個人的に好きだった)

  • Last Labyrinth(想像以上の心理的負荷。夜に買いました。)

  • 一人称ブロック崩し(twitterで見かけてずっとやりたかったやつ)

  • VRアバターにピアノを演奏させるアプリ(運指の推論って意外と研究されているそう。ダイクストラとかガチガチのアルゴリズムの名前も。すごい技術力を感じた。)

次の次は自分も展示出来るくらいの作りたい!